そもそもローコスト住宅って安全なの?
低価格で注文住宅を建てられるローコスト住宅が話題です。負担を抑えつつマイホームを手に入れられるのは大きな魅力です。
一方で、良くない評判も多く見かけます。ローコスト住宅で調べてみると、質が悪い、買うべきではないなどの口コミがたくさんあります。
しかし、全てのローコスト住宅がだめなわけではありません。一昔前に比べると、ローコスト住宅の室は格段に向上しており、住心地の良い家が安く手に入れられるようになっています。
今回は、ローコスト住宅を取り巻く環境や、低価格の理由などを解説します。
ローコスト住宅の需要
ローコスト住宅の需要の高まりは、所得格差の広がりが一因です。
厚生労働省の2016年の調査では、全国の平均世帯年収は約540万円。しかし中央値はそれよりも100万円近く低い約430万円だとわかっています。これがどういうことかというと、平均よりも低い世帯年収の世帯が多いということで、およそ6割の世帯が平均世帯年収を下回る年収で生活しています。
年収から税金や保険料で2割程度差し引かれることを考えると、年間の生活費は約340万円、月間ベースで考えると単純に月の生活費は28万円ということになります。
住宅を購入する場合、この生活費の中からいくら家を住宅ローンの返済に当てることになります。例えば3000万円を年利1.34%で借りた場合、月の返済額は約9万円です。住宅ローンの返済をする場合、残りの19万円で食費や光熱費などの生活費をやりくりしなくてはなりません。しかも、持ち家となれば税金やメンテナンスの費用も考えなくてはなりません。
もし住宅ローンが3000万円ではなく、1200万円になれば、月の返済額はおよそ3万5千円になります。これなら毎月のやりくりに余裕が出ますし、教育費や老後のために貯金をすることもできるようになります。
住宅価格を抑えることができれば、日々の生活や将来設計に余裕ができます。ローコスト住宅が注目された背景には、このような収入格差が理由の一つとして存在します。
ローコスト住宅の不安
批判の多いローコスト住宅。主にデメリットとして挙げられているのは次のようなものです。
・安い素材を使っているため、質が悪い
・希望通りの家にするため変更を加えていくと高くなる
・エネルギー効率が悪く、経済的ではない
ローコスト住宅の一番の心配事はやはり質です。
どのように低価格を実現しているかを知らなれければ「質の悪い安価な素材を使っているから、値段も安いのだろう」と考えるのは自然でしょう。確かに高級な建材や高グレードな設備は使用できないことが多いですが、それでも安全性や機能性に問題があるほど質の悪いものを使っているとは限りません。安価でも、十分な品質をもったローコスト住宅を建てることができます。
要望に応じて変更を加えていくと住宅価格が高くなってしまい、結局ローコストで建てられないという批判もよくあるものです。しかし、変更を加えていくと高くなるというのは決してローコスト住宅に限った話ではありません。大手ハウスメーカーの住宅でも同じような問題は起こっています。
希望を叶えつつ価格を抑えて家を建てるためには、どんなことをすれば価格が上がり、どうすれば節約できるかをしっかり学ぶことが重要です。
気密性や断熱性が低く、光熱費が多くかかってしまうというのも、ローコスト住宅の問題点として挙げられています。いくら安く家を建てられたとしても、その後の出費が大きくては意味がないというのはもっともな話です。
しかし、ローコスト住宅でも十分な省エネ性能を備えた住宅を建てられるハウスメーカー・工務店が存在します。依頼先を選ぶ際に、そうした機能性にこだわった会社を選べば問題ありません。
なぜ低価格で住宅が建てられるのか
初期のローコスト住宅はまさに「安かろう悪かろう」で、品質や住心地に問題があるものが多くありました。現在のローコスト住宅への批判も、このころのイメージが強く影響しています。
しかし、ローコスト住宅への需要の高まりにより、住宅メーカー各社が低価格な住宅に力を入れ始めました。それによってローコスト住宅の中でも競争が生まれ、単に安いだけの住宅では生き残れないのが現状です。
現在のローコスト住宅は、単に安価なだけではなく、選ばれるだけの品質も兼ね備えたものになっています。では、一体どのようにして価格と品質の両方を備えた住宅が実現しているのでしょうか。
材料費の削減
まず、住宅を建てるのに必要な材料の仕入れ価格を抑えています。
グレードを下げたり、選択肢を減らしたりするのはコストカットの基本ですが、この方法には限界があります。品質を落としすぎて家に問題が生じては悪評が広まり、次の顧客獲得ができなくなってしまいます。
仕入れルートの変更は、材料費の削減に大きく変更します。
通常、建材はメーカーから現場に到着するまでの間、いくつかの仲介業者を経由します。仲介業者を通すことで円滑な流通が可能になっていますが、一方でマージンによる材料費の上乗せも起こってしまいます。
そこで、仲介業者の数を減らしたり、時には直接メーカーから材料を仕入れたりして、仕入れにかかる無駄なコストを削減しています。
工事にかかるコストを減らす
工事に時間がかかればそれだけ人件費がかかります。以下に工期を短くするのかもローコスト住宅にはかかせない工夫です。
しかし、単純に工事を急がせては人件費の上昇や、ミスにつながってしまいます。そこで、ローコスト住宅では、工事を単純にすることで、工事にかかる手間を削減しています。
例えば、あらかじめ工場である程度パーツを組み立て、現場での作業を減らせば、高い技術をもった職人を雇わなくても品質の保証がしやすくなります。工事にかかる時間も短縮できます。
また、難しい設計や工事を避け、単純な間取りや設計にすることで、工事期間を短くしたり、ミスの発生を抑えたりするのも有効です。
広告宣伝費用の削減
大手ハウスメーカーの多くは莫大な広告宣伝に莫大な費用をかけています。CMやチラシ、モデルハウスなどにかかる広告費や人件費は住宅価格に上乗せされることになります。
そのおかげで高い知名度を得ているのですが、できるだけ家を安く建てたいという人には、こうした広告宣伝費用の上乗せは納得できるものではありません。
ローコスト住宅では、広告宣伝費用にかけるお金を減らし、住宅価格にもそれを反映しています。しかし、だからといって全く宣伝をしなくなってしまうと、顧客もいなくなってしまいます。ローコストの実現には、必要な人にだけ広告が届くような工夫や調査がかかせません。
社内システムの効率化
家を建てるのに必要なのは、現場で働く職人だけではありません。住宅メーカーでは、顧客と現場をつなぐ営業の人間が多く働いています。
こうした営業にかかる人件費もコストカットの対象です。社内システムを効率化したり、社員教育に力を入れたりすることで、無駄な人員を減らし、少数精鋭ですすめていけるような工夫をしています。
どこで建てるのが良い?
質の良いローコスト住宅が増えたとはいえ、なかには今ひとつのクオリティの住宅もまだまだ存在します。また、ローコスト住宅の競争が進んだ結果、同じような価格帯でも、ハウスメーカーや工務店によって機能性やデザイン性なども様々です。このたくさんの選択肢の中からより良いものを選ぶにはどうしたらよいのでしょうか?
ローコスト住宅の場合、まず確認しておきたいのは「なぜローコストなのか」ということです。どのようにローコストとクオリティを両立しているかは各社で異なります。しっかりと答えられなかったり、おかしな返答をしたりするような業者は、質の低いローコスト住宅である可能性が高いです。
また、ローコスト住宅選びに限らず、ハウスメーカーや工務店を選ぶ際は比較が重要です。価格だけでなく、機能や特徴、アフターサポートなど、様々な点について比べてみましょう。
ほとんどの人にとって、住宅購入ははじめてのイベントです。一つの会社を見ただけでは、何が普通で、どこが良いのかに気がつくことはできません。
依頼先選びは非常に手間と時間のかかる作業ですが、その後の家づくりに大きく影響を及ぼします。しっかりと情報収集を行い、納得のできる業者に依頼しましょう。
ローコスト住宅で失敗しないために
不安や批判の多いローコスト住宅ですが、安いからといって必ずしも低品質だとは限りません。
低価格ながらも、機能性や快適性に優れた住宅を建てている住宅メーカーに依頼すれば、安くても満足できる家づくりができます。
品質を下げるのではなく、企業努力によってローコストを実現している業者に出会うためには、価格の理由を直接尋ねることと、いろいろな会社を比較することがかかせません。慎重に依頼先を選べば、ローコスト住宅だとしても失敗することはありません。
住宅にかけるお金を節約できれば、日々の生活にゆとりができたり、将来のために貯金したりしやすくなります。ローコスト住宅のステレオタイプに惑わされることなく、自分自身の目で確かめることが重要です。